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雲行き怪しい午後の日に

二次創作main…日和、VOCALOID率高め   稀に掌アリ
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  • 03/16/13:07

追憶

「俺って死んだのかなー」

 一人の青年が暗闇の中で呟く。それを呟いた途端、闇色だった世界が行き成り神々しく光だし、一人の真っ白いワンピースを着た少女が現れた。年端は僅か十三歳くらいであろう。髪の毛は腰ほどまで伸ばしたロングの漆黒色。顔立ちは一見幼く見えるが、しかと見ると凛々しく大人のような顔つきをしている。
 青年は全く驚かず、そのまま微笑んだ。そして、彼女の艶が掛かった頬に優しく触れた。すると、先程までびくともしなかった少女がぴしりと彼の掌を叩いた。

「何するのよ。初対面の人にそうする? 普通しないわよ。全く常識知らずだわ」
「そ、そんならお前だってフツー叩かないだろ?」

 意味の無い喧騒が長々と続く。少女は青年の身内に似ていたらしく、想い出が蘇ってきて彼女の頬に触れてしまったと言うわけである。それでも少女は納得しないらしく、その可愛らしい小さな頬を膨らませていた。
 しょうがないので青年は「すまん」と謝ることにした。すると、少女は上機嫌になったらしくふふんと鼻を鳴らして「それでいいのよ」と偉そうに仁王立ちをする。
 目を細めるほどの光もいつの間にか慣れてきたようで青年は眉を顰めることをしなくなった。その時、少女が重たい唇を開いた。

「分かっているようだけどあたしは貴方の魂を喰らった死神。つーことで、あんたはもう下界には存在しないことになったの。お分かり?」
「あー、分かった。つまり、お前が無断で俺の命を喰らったってことだな」
「物分りが早いじゃない」

 またもや勝ち誇ったように鼻を鳴らした少女に憤りを感じたのか彼は拳を少女に一発食らわせた。不意打ちの攻撃に目を張り、目頭に涙を溜めて上目遣いに青年を睨みつけた。そのアングルはどことなく可愛く、青年は油断してしまった。其れを見計らってか少女は彼の頭を巨大なハリセンで殴っていた。そのハリセンは何故か物凄い攻撃力を持っていて、丈夫と下界でも自慢していた彼でさえも頭に瘤が出来るほどである。
 頭を抱え込んでいた青年を見かねた少女ははあっと深く溜め息をついて、そこに手を翳した。すると、瘤は段々と消えていき痛みは消え失せた。

「な、なんだその魔法」
「魔法じゃない。治癒術よ。ちゃんとあんたでも出来るの。普通の人間でもやれば出来るものよ」

 人差し指を立てて、ゆっくりと言い放つ。その冷徹さはとてもじゃないが恐ろしい。青年は背筋をぞっと震わせて、先程までの可憐な少女と重ね合わせる。若しかして、死神と言うのは本当なのかもしれない、と思い始めてきた。
 そんな矢先のこと、少女はもっと冷徹に呟いた。

「あんた、あたしのために死神になりなさい。そうしないと、あたしっていう存在がなくなっちゃうの。名前は?」

 青年は拒否しようと思った。しかし、口が勝手に動いてしまう。手で覆い隠そうとしても体の自由が利かない。

「高浪……ユウタ」
「あたしの名前は、柊カナコ。宜しくね」

 それから、彼の記憶は途切れた。
 彼が瞳を開けるのは、また暗闇の中。

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つづきはこちら

姫様の御婚約


 漸く、舞踏会が始ります。貴族達は全員、グラスに紅いワインを注ぎ笑い騒ぎ立てています。そんな光景を裏から見ている姫は長い長い溜め息をしておりました。豪奢で可愛らしいドレスを身に纏っている鏡に映っている自分を見ていますと、思わず気持ち悪くなってきてしまうのです。姫は無理に鏡の自分に笑いかけましたが、はたから見れば滑稽な人物にしか見えません。
 姫は酷く落胆しました。そうして、瞳に涙を溜めます。目頭はいつのまにか赤くなっていて幾らごしごしと擦っても直らない気配さえします。手元にあるハンカチを手に取ったそのとき、ドアをノックする音がします。

「入りますよー」

 能天気な声は后で御座います。温厚で能天気な声は后の性格や体格でさえも現しています。小柄で華奢で細身の体つきに無邪気な笑顔。たまに見せる真剣そのものの表情は艶やかで姫と瓜二つといっても過言ではないです。后は姫と比べれば楽な格好をしていますが、それはそれは派手なドレスを身に纏っています。
 姫は心底驚かれました。有無も聞かずにいきなり入ってきたこともそうですし、それに自分よりも若々しいオーラを醸し出しているのです。姫の乙女心は少しだけ芽生えて、嫉妬心というものが少しだけ生じました。

「い、いきなり入ってこないで下さい……」
「あら。御免なさい。もう着替えているかと思って」

 悪気がない笑顔。其れがより一層腹立たしくなる、と姫は随分ご立腹されています。頬を膨らませ「そうですか」と一言無愛想に呟きます。すると、后はそれには動じずゆっくりと姫の隣に座りました。まるでその姿はお人形さんのようです。
 そうして、鏡を見ながらゆっくりと話しました。

「お父様が言っていたことは正しいですわ。貴女は数々の人間の時間を奪ってしまいました」
「承知です」
「だからこそ、皆々の希望に答えるべく、きちんと婚約しなくてはなりませんよ。最初は厭でも最終的には好きになっていきますわ」

 姫はおずおずと頷き、そして質問をしました。

「お母様達も……?」
「あら、それは内緒です。あ、もう時間ですよ。ほら、早く」

 と手を握り椅子に座っていた姫を無理矢理に立たせました。しかし、姫は抵抗はしませんでした。なんとも、后の言ってることは逆らえないからで御座います。
 姫は廊下を通る際、王の姿を見ました。急いでいたので話しかける暇はなかったですが、先程の無礼を思い出し一礼をしました。王はまたあの温厚な笑みを浮かべ急ぎなさい、という合図を繰り出しました。姫は速度をもう一回あげて民衆が待つ広場へ猛ダッシュをしました。
 例え、気に入らない相手でも姫は受け入れる覚悟は出来ていたのです。カーテンが開き、姫は王子と対面を致しました。



 そこから、新しい物語は始るのである。

(おわり)

姫様の我儘




 一つの王宮から大きな溜め息が毀れました。とてもとても大きな王宮で街の人々は近寄れないほどの豪華さでありました。なりばかりでなく部屋一つ一つが煌き輝いているほどであります。そんな豪邸にこの国の未来を担うお姫様がいました。そのお姫様は美しく可憐で正に姫にぴったりな女性です。しかし、性格と言ったら恐ろしいほどに女性らしくないのであります。寧ろ、男性と言っても過言ではないほどであります。喧嘩っ早く短気で髪の毛はボブショートに近く、后や王にはきちんと敬語なのでありますが、自分の気に入らない人にはとてつもなく口が悪いのです。ですが、弱いもの虐めは全くといっていいほど行いません。若しも、執事やメイド内で誰かを虐げるとなったら説教は恐らく半日は掛かるでありましょう。しかし、姫は暴力は一切しないと言い切ります。
 服装は豪華なドレスではなく、執事が着る様なものを身に纏います。しかし、パーティーなどは別です。仕方なく着ることが御座います。今までもそうでした。しかし、今回ばかりはそうはいかないようで朝からご機嫌斜めなのであります。
 いつまで経ってもお姫様は自室から出ようとはしません。膨れっ面でベッドの上で胡坐なんて掻いています。執事達がドアをしつこくノックをしても応答はしません。ただ、胡坐を掻いて座っているだけです。其れを一時間続けていますとなんとお姫様は枕をドアに投げつけました。そうして、怒鳴り散らしたのであります。

「あたしに関わるなっ、舞踏会になんてぜってー出ないからなっ」

 そうなのです。今日は姫の運命が左右される日。隣町の王子が来て強制的に婚約させられてしまうのであります。しかし、姫はまだ十五歳という若さがあります故、結婚する気はないと断言しておりました。今もそうで頑として執事達の言うことは聞きません。
 見かねた大臣は王に説得するよう頼むことになさいました。しかし、王は「そうか」と相槌を打つだけでどうも動こうとは致しません。后も全く動じず「そうですか」と微笑を浮かべるだけであります。
 そして、時刻はもう舞踏会に近づいているのでありました。姫はあれからずっとぬいぐるみを抱きかかえたままであります。必死に説得を行っていると、先程まで温厚な笑みを浮かべていた王がいきなし現れ、執事達をすり抜けてドアを蹴り飛ばしました。その光景に誰しもが驚きました。すらりと長く細い手足からは想像も出来ないほどであります。今日はじめて、姫の姿が露となりました。その姿は見事に姫らしくないお姿で王の怒りのボルテージは一気にあがったらしく、そのぬいぐるみをひったくりました。

「っ……なにをするのですか、お父様っ」
「なにをするのですかではないっ。お前は幾つの人間に心配させたと思っているんだ? 兎に角、舞踏会には出席すること。いいな」

 姫は言葉を発しようと努力しましたが、思いつかないのでしょう。溜め息をつき「わかりました」と一言呟いた。王は決してその表情を緩めたりはしませんでした。眉間に皺を寄せ、ただ一言頷きその場を立ち去りました。崩壊されたドアは恐らく明日になったら修復されているでしょう。
 暫しの沈黙が続き、執事達は一気に引き上げていきました。それを見届けると直ぐに姫は大粒の涙を流しました。王が怖かったのではありません。ただ、自分の不甲斐のなさとこれから無理矢理に婚約されることが厭なのでした。

(つづく)

どうやら、私が思っていたよりも貴方のことを好いていないようです


 あたしは差し詰め遠くから傍観している恋のキューピットだろう。たまに二人の仲を進展させたり、はたまた片思いの子を激励したりする。そんな中途半端な役割だった。其れはお節介と捉えられたりしたことや、相手を傷つけたことも沢山あった。しかし、あたしはその感情を抑えることが出来なかった。
 他の人が失恋する姿を見たり、涙を流して悔やんでいる姿を見ると、あたしの欲求は満たされる。たまに、あたしに告白してくる奴をもっぱら振ると、快感に満たされる。
 徐々に友人は離れていって、学校では孤独な人間となっていた。いや、世間一般的に言うとあたしは美人の部類に入るので、孤独なお姫様と言った方が的確だろう。
 しかし、そんな事実を知らずに、あたしの元へ駆け込んでくる人が稀でもいるのである。容姿や性格は勿論ばらばらで、一つ共通点といえば単純馬鹿なところであろう。そんな物好きがあたしの元に来るのは月に一度や二度だけだ。

 今日はそんな物好きが来るような気がして胸が高鳴った。勿論、あたしに恋愛相談を受けて恋愛が成就した人は誰もいない。その理由は色々とあるのだが、やはり、毎日儀式をしているからであろう。その儀式とやらも企業秘密としておく。
 そして、やっとのことで来たその女の子は大人しく引っ込み思案であたしよりも地味で目立っていない存在な隠れ美少女であった。そんな子の絶望的な顔を見るのがあたしの唯一の楽しみである。
「あのー……、恋愛相談受けてくれるって言う、藤川文子さんですよね」
「ええ。そうですよ」
 あたしは作り笑いを浮かべる。しかし、演技が完璧すぎるのか彼女はすっかりあたしに打ち解けてしまった。別にうざったいとか面倒臭いという感情は抱かなかった。だって、彼女は失恋をするからだ。
「二年五組の酒本ちさとです。ちさとは平仮名で書きます」
 そして、ぺこんと勢い良く頭を下げる。いいこだな、とは思ったが恋愛を成就させる気は全く起きない。あたしはもう一度笑って「此方こそ宜しくね」と優しく呟いた。
「で、好きな男の子って?」
「さ、サッカー部の加藤君です……」
 あたしは瞬時に思い出した。そういえば、あの人の相談はいつも受けているような気がする。そんなに格好良いのかは不明だが、サッカー部でスポーツマンは絶対にチヤホヤされるに違いない。
 不適な笑みを浮かべないように心がけ「分かったわ」と気前のよさそうに言った。が、心の中はどす黒い考えで埋め尽くされていた。どうやってこの硝子のような心を砕けさせるか、恋する乙女のような表情をしたのをどうやって壊すか。楽しみで楽しみでしようがなかった。

 彼女と色々なことを話し、ちさとさんから一方的に信頼されつつあった。しかし、其れも今日で終わり。彼女が友達から虐げられるのも今日で終わり。彼女はあたしから離れるのだから。
「じゃ、頑張ってね。一発気持ちをぶつけてくるのよ」
 そうやって送り出す。彼女は機械のように頷き勢い良く外に飛び出した。手紙を入れておいたので大丈夫だ、きっと加藤君は来てくれるだろう。けれど、彼女はこれから起こる悲劇など知る由もないだろう。

 ブラウンのカーテンを開け、校庭を見つめる。すると、彼女と加藤君の姿があった。こうして遠くから見るとお似合いなんだけど、生憎、加藤君には愛しい恋人がいるのよね。其れはあたしだったりするのだけど。
 そして、数分も経たないうちに彼女は泣いてその場を去る。その顔が見たくてあたしは今まで恋愛相談を受けてきた。
 信じる方が馬鹿なのよ。

「どうやら、あたしが思ってるよりも好いてないようね。ちさとさん」

 加藤君に早速別れを告げに行かなきゃ。
 静かな教室の扉をあけ、あたしは加藤君が待っている場所へと、静かに向かっていった。


(thanks! 九十九在処様)

(恋愛魔術師にお任せあれ、過去のお話)

恋愛魔術師にお任せあれ



「恋ってさ儚いわよね」
 とある喫茶店の出来事だ。一人の女性がはぁっと深い溜め息をついていると、隣にいた黒い洋服に身を纏った女が怪しげにそう呟いた。女性は驚き一瞬息をとめた。なんと彼女は同じ感情を抱いていたからだ。女は呟いた後、彼女を見て艶やかに不気味に笑ってみせた。女性は咄嗟にマスターを見ると、彼は淡々とマグカップをふいているだけだった。
「あら、若しかして貴女も思っていた、とか」
 怪しげな女はマスターに何かを告げてから言い出した。喫茶店の中には女二人と男一人しかいない。時間帯も時間帯であるが、目っきり此処の喫茶店は人気がない。常連か物好きかが通い詰める所である。
 女性……佐織は、友人からの紹介で此処に通いつめることとなった。其れからは無口なマスターに愚痴を言ったり、温かいコーヒーを毎日飲んだりするようになっていた。其れが、彼女のストレス発散方法だ。
 佐織は女の言葉に頷く。すると、女はクスクスと感じの悪く笑い、テーブルに千円札を置いた。それと同時に真っ白な紙を佐織に渡す。
「何か困ったことがあれば連絡して。それじゃ、またね。マスター。佐織さん」
 佐織が反応する前に彼女は消えていた。呆然としている佐織とまだマグカップをふいているマスターだけが残された。
「か、彼女は誰なんですか」
 立ち上がろうとした腰をまた下ろし、興奮気味に言い放った。マスターはマグカップをふく手を止めて、札束をレジにいれた。
「魔術師、だよ。恋愛魔術師」
 無口だった彼はいきなりそう口にした。彼女の手にあった紙は白紙だったが、気がつくと其処には丸まった字でアドレスが記入してあった。そして、其処には「恋愛魔術師 アヤコ」という文字も浮かんでいた。
 佐織はくしゃくしゃに丸めてごみ箱に捨てたい衝動に駆られたが、心を正常に保ち、少しは信じてみることにした。恋愛魔術師、アヤコとやらを。

 

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