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雲行き怪しい午後の日に

二次創作main…日和、VOCALOID率高め   稀に掌アリ
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  • 03/16/04:50

ダレンの育児日記


 僕はふと目が覚めた。いやな予感がして、ふと目が覚めてしまった。
 ホテルなのですぐに冷蔵庫に手を伸ばせば、いくら喉が渇いていても飲めるといった、便利な機能つき。
 だが、生憎牛乳しか入っていなく、仕方が無いのでコップを使わず、ラッパのみをした。クレプスリーが起きていたらきっと怒られていただろう。
 カーテンを勢いよく開けた。それが、何時もの日課となってしまっている。子供の頃からの癖で、いつも「うーん……」と唸り声を上げるクレプスリーの声で閉めるのだが、今日は何故か唸り声が聞こえない。しかも、クレプスリーの気配が全く感じられない。まあ、何時ものことだしそれは気にしないことにした。しかし、まだ深夜だということには驚いた。もしや、一時間たりとも寝ていないのかもしれない。時計を見るとまだまだ一時を差している。
 だとすれば、クレプスリーは起きている筈で……。
 思考を働かせていると、服の裾を強く引っ張られた。何かと思い、見てみると其処には五歳くらいの男の子が立っていた。オレンジ色の髪が一面に生えており、何処かの誰かさんとは対照的だ。ぼくは不思議に思い、自分より遥かに小さな男の子の頭を撫でた。すると、男の子は何を血迷ったかぼくの手を叩いたのだ! そして、クレプスリーのような瞳をし訴えかけてきた。

 「師になんと失礼なっ! 手下の癖に……、お前をそんな下等な人間に育てた覚えはないぞ」
 「手下とか……。というか、君は何処から入ってきたの? お母さんは? お父さんは……」
 「何を口走っているのだ。我が輩を小さな子供のように」
 「だって、君子供でしょ? 大人なわけないよ。さあ、此処から出て行って」

 と言いかけると、とてつもない力がぼくにのしかかる。男の子はぼくを押し倒していたのだ。
 今にも殴ろうとしている。守ろうとしてももう遅い。ぼくは屈辱的なことを味わうことになるのだ。
 きゅっと目を瞑り暴行を待ち構えていたら(そうするしかなかったのだ)、拳が当たる感触がない。殴るのを止めたのか、すっと体も軽くなる。
 瞳を開けると腕組をしながら左頬の傷を引っかき、外の街を見ていた。その姿はまるでラーテン・クレプスリーのようだ。

 「もしかして、クレプスリーだったり……」
 「今頃気づいたのか。我が輩はお前をそんな鈍い男に育てた覚えは無いぞ」

 きりっと睨む姿はクレプスリーそのもの。見れば見るほど、クレプスリーに見えてきて思わず噴出してしまう。
 いやな予感というのはこういうことだったのか……。五歳の彼を見るとなると、今まで以上に大変になるかもしれない。
 例えば、戦闘のときはぼく一人で戦わなければならないことになる。五歳の彼は人間以上に力があるとしても、戦力にはならないのは確かだ。油断させることは出来るが。
 と、そんなことを考えるよりまずは、何でクレプスリーがこんな愛らしい姿になったのかを知らなければならない。子供の頃は、不細工ではなく本当に可愛かったということを思い知った。

 「で、何でクレプスリーはそんな姿になっちゃったわけ? 魔法とか非現実的なこと有り得ないし……」
 「お前への試練だろう。誰が与えた試練かは分からんが」
 「全く迷惑な話だよ。この先、ぼくが結婚して子供が出来るなんてことはないしさ」

 クレプスリーは浅く頷き、外の街からぼくに視線を移した。

 「之からは、お前が我が輩の父親の存在となるのか」
 「えっ、嫌だよ。ていうか、クレプスリーバンパイアだし、昼間に外へ出るチャンス無いじゃんか」
 「子供になる期間だけ、人間として許された。視覚も嗅覚も鈍くなってしまった。だから、昼間へ外に出ることも可能になり、一緒にショッピングが出来る……という結論に達しないかね? シャン君よ」

 やはり静まった夜には何の声も通ってしまうのだ。闇の恐ろしさ、というのを改めて感じたぼくであった……。口調は変わらない。
 例え、ぼくより背が小さくて愛くるしい姿をしていたとしても、この胸の怒りと言うものは抑えられない。

「いやだ!」

 ぼくの声はホテル中……いや、この世界中響き渡っただろう。

fin




むかあしに書いたSS。
ちなみに、師弟愛だと信じて。

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