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鏡の中 プロローグ
君は笑った。
鏡の中にいる僕に笑いかけた。
「あたしの名前はリン」
天使のような微笑。
僕も思わず顔も綻ぶ。
彼女は僕に対して初めての満面の笑みを向けてくれた。
すると、彼女は困ったような表情になる。
僕も同じように俯いてしまう。
彼女の表情を伺いたかったが、それさえも拒絶されてしまう。もどかしい。
だが、すぐにリンはにっこりと笑って、手を差し伸べてきた。
「あなたはレン。鏡音レンだよ」
レン、レン、レン。覚えた。僕の名前はレン。鏡音レンだ。
そして、彼女は鏡音リン。
一つになれたような気がした。
でも、僕は鏡の中の住人。彼女は現実世界の住人。
相容れない存在。触れてはいけない存在。
僕は喋れない。彼女は喋れる。喋りかけてくれる。
彼女が泣いていると、僕も悲しげな表情になる。
励ましは出来ない。声をかけることも出来ない。
僕がこうして此処にいても、彼女を見守ることしか出来ない。
「宜しくね、レン」
頭の中に羅列した文字を振り払い、僕は彼女と同じように笑みを浮かべた。
同じように手を差し伸べる。
冷たい、鏡。
僕らの間を隔てる。だけど、僕が存在するには必要すべき物。
嗚呼、そっちに行きたい。リンに触れたい。
鏡を打ち破れる力さえあれば、僕だって……。
「どうしたの、レン。悲しそうな顔してる」
違う。リンが心配そうに僕を見ているから、鏡だから。
「寂しかったんだね。ずっと、あたしがいてあげるからね」
抱きしめてくれる。
でも、リンの温もりは感じない。
だから、僕は聞こえないとしても歌った。彼女の頭に音楽が流れるように。
「レン、歌っているの?」
そして、一緒に音を奏でる。
彼女と初めてあわせた音は本当に初々しくて心地よかった。
こうして歌えるのだから、僕は充分だ。
彼女の耳に僕の声が届かなくても、歌声なら届くのだ。
それが、彼女と僕の初めての出会いだった。
嘘です、続かせます。
レンリンで、鏡に映った異性という設定です。
双子設定はもう定番ですからね。
リンは現実世界、レンは鏡世界の住人……といっても、一人しかいないんですよね。
まあ、細かいのは物語上で語り明かしてみるつもりです。たぶん。
あとは、ミクとかめーちゃんとかKAITOとか出てきます。
亜種は残念ながら登場させる予定はありません。
中短編でだらだらですが、どうか最後までお付き合いください。
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