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恋心、燃え盛り時
穏やかなお昼休みに突入した。俺は何時も通り、屋上に行き、コンビニで買ったパンを食べようとしていた。すると、幼馴染の女が行き成り、隣に失礼したのだ。何時もは友達とわいわい教室でお弁当を食べている。今日は一体如何したというのだろう。
しかし、俺達はどちらも口を開こうとはしなかった。あー、このまま貴重な休み時間が終わってしまうのかと思うと身震いをしてしまう。溜息をつこうとした。
「ムカつく!」
すると、咄嗟に彼女は叫びだした。パンを食べていた最中だったので、驚いて俺は口内に入っていたものを噴出した。牛乳じゃなくて心底良かったと思ったが、彼女――衣咲はそうでもなかったらしく、先程よりも憤慨していた。当たり前のことだろう。だって、卸したての制服が、俺の口内に入っていたパンに汚されてしまったのだから。
「ちょ、臭い! てか、汚いっ。早く拭いてよ」
「あー、すまん」
と、適当に謝っておく。この状況でキザに「牛乳じゃなくて……よかったな」なんて言ったら、殴られ蹴られ更に酷いことをされかねない。衣咲は、女だからといって舐めて掛かってはいけない存在だ。小学校の頃から直ぐに暴力は振るうし、口も悪い。まるで餓鬼大将のようだ。というよりも、餓鬼大将だった。活発すぎる、俺にとっては厄介者だった。
その頃と比較すると、こいつは大層成長したと思う。女らしくなったし、背もそれなりに高くなったし。あ、其れは当たり前か。其れに、胸まで発達している。尻は昔からいい形だったし……って、変態か、俺は。
煩悩を振りほどこうとすると「早くっ」と牙をむいた衣咲が偉そうに俺の前に立っていた。白いハンカチを手に持っている。拭け、と命じているのか。普通は、男の俺に頼まないだろと不服そうな表情を浮かべた。無視をして、牛乳に手を伸ばそうとしたら、其れよりも先にぴしゃんと手の平を打たれる。
「なあに、無視しようとしてるのお? 早く拭きなさいっ」
「……普通は同性に頼むと思うが」
と、俺が噴出したパンだらけのスカートを指差す。すると、衣咲は顔を真っ赤にさせ其の儘、後ずさった。怒りのせいで自分のことも見えなかったのか。この女は。そして、牛乳のストローを口の中に入れる。
「あのね、聞いてくれる。私のお悩み」
「嫌だといったら……」
「ふざけんな」
「はい、ちゃんとご静聴します」
見事な脅迫。泣きたいぞ、と心で思うと、其れを感じ取ったのかなんなのか、衣咲は急に泣きそうな表情になった。でも、俺みたいな一時的なものじゃなくて、溜め込んでいたのだろう。その”お悩み”とやらを。
「好きな人、いるの」
そりゃ、お年頃の女の子だからな。
と、心の中ですばやく突っ込んでみる。
「その人は格好よくないし。頭も悪いし。あ、でもスポーツはできる。それと、背も高いしやけに筋肉質だし」
酷い言い様だな。その男、惨めで可哀想だな……。本当に衣咲は悪趣味だなあ。
「ぶっきら棒で面倒くさがり屋で。でも、優しい人。だから、クラスの評判もぴか一なんだ」
クラスの奴らは、すっごい悪趣味な奴なんだな。うんうん、と勝手に頷く。すると、そんな姿を見た衣咲はくすりと微笑んでいる。何だよという顔で睨むと、行き成り怖い顔になった。致し方ないので、しょんぼりしていると続きを話し始めた。
「人気投票ではいつもナンバーワン。ライバルも多くて大変なんだ」
「……で、其れが何のお悩みなんだよ」
「こっからが重要だから、ちゃんと耳澄まして聞きなさいね」
もう一度、脅迫。こいつは絶対に彼氏できないぞ、と心に思い、命令通りに耳を澄ましてみる。
「そんな私の好きな人……判る?」
微風に吹かれて、靡く栗色の長い髪。太陽がまぶしいのか細められた瞳。艶っぽく大人びた表情。俺の口は蠢いていた。答えようとしない俺に、衣咲は見兼ねたのか、立ち上がって指を差した。
「それは……」
キーンコーンカーンコーン、いいところでのチャイム。こけっという効果音とともに、衣咲は少しだけ転げた。よし、リアクションは満点だなと思い指で丸を作ってみた。すると、衣咲は顔を真っ赤に染めて、回れ右をした。
「ちゃ、チャイム鳴っちゃったから。そ、そんじゃ先に戻ってるわね」
駆け足よーい、始め。という号令が似合っていた。あ、この丸は余計だったか。と思い、全ての行動を振り返ってみてみるととても恥ずかしいものだった。
「その人は格好よくないし。頭も悪いし。あ、でもスポーツはできる。それと、背も高いしやけに筋肉質だしぶっきら棒で面倒くさがり屋で。でも、優しい人。だから、クラスの評判もぴか一、人気投票ではいつもナンバーワン。ライバルも多くて大変。そんな私の好きな人は……」
言わなくても判る。
「だって、其れは……」
その声も、もう一つのチャイムにかき消された。やばい、授業に遅刻してしまう。嗚呼、牛乳よ。腐れないでくれ給え。
そして……、この恋心よ、いつまでも燃え盛っていてくれ。
/恋心、燃え盛り時
いつも、イマイチな出来。
けど、これはもっとイマイチな出来(苦笑)
まだ書きたいことの半分以上も書いてないです。
本当に掌過ぎて糞笑います。ハハハハハハ。
主人公がギャグ的な語りをさせるの大好きです。
これ、衣咲視点もやってみたいなあ。
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