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不思議な双子の世界
よく似ている。この二人を見ているといつもそう思う。同じ顔立ち、同じ体系、同じ声など指折り数え切れないほどの多さ。しかも、私の目の前で媚びている二人はまるで同じ。今は彼等と遊んでいる途中だ。私は幼稚園の先生という立場で、彼等は生徒と言う立場。高鬼、という極普通の遊戯だ。いつも、私が鬼になると此方へ来て縋ってくる。その姿が可愛くて思わずその小さな腕に触ってしまう。本当にむちむちしていて、赤ちゃんのようだ。私は思わずぽけーっとしてしまった。
「「ねえ、先生早くしてよ」」
二人の合わさったハーモニーに私は正気を取り戻し、無理矢理笑顔を作り「はい」とタッチをした。勿論、どちらをタッチしたのかは分からない。ズボンに名前が書いてあるのだが、此処からでは名札でさえ見えない。恐らく弟の方だと思う。名前は、草壁翔也と草壁雅也。名前でさえ瓜二つである。
「うわー、翔也かよーっ。いっつも翔也だよな、先生って」
雅也君が口を尖がらせつんとした顔で私を横目でちらりと見る。その横顔はとても可愛らしかった。けど、本当にわざとではないのである。いつも右にいるのが翔也君で……って裏を返せばわざとなのかもしれない。その法則を知っているから。
「ま、いいじゃん。早く十数えるから、雅也と先生逃げてよ」
有無を聞かず、翔也君は「いーち、にー」と数え始めた。他にももっと園児は沢山要るが、此処の砂場にいるのは私達だ。早く逃げなくてはと思い、私は咄嗟に雅也君の手を引き、遠くの草葉へと駆けていった。
「此処なら大丈夫……」
「みんな此処にあんまり来ないからね」
雅也君が荒ぶる息を整えようと、深呼吸をしている。「きゃーきゃー」と騒ぐ園児達の声に耳を済ませながら、胸に手を当てて目を瞑っている雅也君を見つめる。すると、気づかれたようで「なあに」と聞かれた。私は日々思っていることを訊ねた。
「双子って変な感覚しない?」
「カンカク?」
「あの、なんか自分と一緒の顔の人が隣にいるとかさ」
「別に。翔也と僕は全然違うもん。だから、なんとも思わない。きっと翔也だってそうだよ。僕達は全然違う」
砂を弄りながら自分なりの言葉で真面目に言う。この子は本当に成長したと心底思う。初めて会った時は口さえ利いてくれなかったのだから。翔也君はすぐに打ち解けてくれたけど、引っ込み思案の雅也君は多分、私のことを認めてくれていなかった。けど、今はこうして本心を言ってくれる。とても幸せだと思う。
でも、本当に不思議で仕方が無い。ま、別にそれでもいいか。
「先生たっちぃー」
能天気な翔也君の声がする。後ろを振り向くと、げらげらと笑っている翔也君。隣にはにんまりと怪しい笑みを浮かべている雅也君。やはり、あくどい作戦だったのか。
「ちょ、卑怯だよっ」
子ども染みているのは私の個性でもあり、短所でもある。
「卑怯って言葉、知りませーん。ホラ、早く十数えてよ」
今度は雅也君。翔也君は笑いすぎて声も出ないようである。こしょこしょをしてやりたくなったが、此処はぐっと抑えて「いーち」と数えだす。すると、今度は擦り寄ってこないで逃げ出した。二人して、仲良く手をつないで。
「じゅーうっ」
近くの子を捕まえようと思った。双子はどうせ、二人仲良く遠い砂場で遊んでいるのだから。
fin
職場体験で本当に似ている双子いました。
勿論、男同士のです。
この小説はその双子がモデルなんですよね。
ま、大部分が違いますけどね。
先生っていうのが私だと思ってくれれば幸いです。
でも、こんな口調じゃないし、傍らの方と一緒に逃げたりしません。
どちらかといえば、双子に追跡される方です(笑)。
次はこのシリーズでなんか書いてみたいと思います。
「「ねえ、先生早くしてよ」」
二人の合わさったハーモニーに私は正気を取り戻し、無理矢理笑顔を作り「はい」とタッチをした。勿論、どちらをタッチしたのかは分からない。ズボンに名前が書いてあるのだが、此処からでは名札でさえ見えない。恐らく弟の方だと思う。名前は、草壁翔也と草壁雅也。名前でさえ瓜二つである。
「うわー、翔也かよーっ。いっつも翔也だよな、先生って」
雅也君が口を尖がらせつんとした顔で私を横目でちらりと見る。その横顔はとても可愛らしかった。けど、本当にわざとではないのである。いつも右にいるのが翔也君で……って裏を返せばわざとなのかもしれない。その法則を知っているから。
「ま、いいじゃん。早く十数えるから、雅也と先生逃げてよ」
有無を聞かず、翔也君は「いーち、にー」と数え始めた。他にももっと園児は沢山要るが、此処の砂場にいるのは私達だ。早く逃げなくてはと思い、私は咄嗟に雅也君の手を引き、遠くの草葉へと駆けていった。
「此処なら大丈夫……」
「みんな此処にあんまり来ないからね」
雅也君が荒ぶる息を整えようと、深呼吸をしている。「きゃーきゃー」と騒ぐ園児達の声に耳を済ませながら、胸に手を当てて目を瞑っている雅也君を見つめる。すると、気づかれたようで「なあに」と聞かれた。私は日々思っていることを訊ねた。
「双子って変な感覚しない?」
「カンカク?」
「あの、なんか自分と一緒の顔の人が隣にいるとかさ」
「別に。翔也と僕は全然違うもん。だから、なんとも思わない。きっと翔也だってそうだよ。僕達は全然違う」
砂を弄りながら自分なりの言葉で真面目に言う。この子は本当に成長したと心底思う。初めて会った時は口さえ利いてくれなかったのだから。翔也君はすぐに打ち解けてくれたけど、引っ込み思案の雅也君は多分、私のことを認めてくれていなかった。けど、今はこうして本心を言ってくれる。とても幸せだと思う。
でも、本当に不思議で仕方が無い。ま、別にそれでもいいか。
「先生たっちぃー」
能天気な翔也君の声がする。後ろを振り向くと、げらげらと笑っている翔也君。隣にはにんまりと怪しい笑みを浮かべている雅也君。やはり、あくどい作戦だったのか。
「ちょ、卑怯だよっ」
子ども染みているのは私の個性でもあり、短所でもある。
「卑怯って言葉、知りませーん。ホラ、早く十数えてよ」
今度は雅也君。翔也君は笑いすぎて声も出ないようである。こしょこしょをしてやりたくなったが、此処はぐっと抑えて「いーち」と数えだす。すると、今度は擦り寄ってこないで逃げ出した。二人して、仲良く手をつないで。
「じゅーうっ」
近くの子を捕まえようと思った。双子はどうせ、二人仲良く遠い砂場で遊んでいるのだから。
fin
職場体験で本当に似ている双子いました。
勿論、男同士のです。
この小説はその双子がモデルなんですよね。
ま、大部分が違いますけどね。
先生っていうのが私だと思ってくれれば幸いです。
でも、こんな口調じゃないし、傍らの方と一緒に逃げたりしません。
どちらかといえば、双子に追跡される方です(笑)。
次はこのシリーズでなんか書いてみたいと思います。
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