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ダッシュ奪取ダッシュ!
「な、なんですの。貴女っ。全く無礼にもほどがありますわっ」
一人の少年が豪奢なドレスを身に纏った少女をお姫様抱っこをしながら道路を駆けていく。周りからの視線は相当痛く冷たく彼の心に刺さっていく。少年は半泣き状態で奔りながら叫んだ。
「お、おれだってさっぱりだぁっ」
.
漸く彼等は止まった。貴族のような格好をしている少女は長い髪の毛を靡かせ、正座をしている少年を簸たと睨みつけている。其れは軽蔑的で攻め立てているようであった。しかし、彼等、両者とも口を開こうとはせず睨みあいを続けていた。彼等がいるところは人通りが少ない道路で怪しい通りと評されている。冬場は冷たく、夏場では熱いアスファルトも、じめじめとした六月の気候であると丁度良い。なので、少年は礼儀ただしく其処に座っていた。
約十分ほどであろうか。睨みあいには終止符が打たれた。少女が物凄く深い溜め息をつき、緊張感を緩ませた。しかし、その軽蔑的に見下す視線は変わらない。少女は大きく口を開けハキハキと喋る。
「貴女は何故あたくしを連れ去ったのです。……全く此処は何処なのですか?」
「ちょ、待てよ。空から降ってきたのは他でもないお前だ。して、黒服の男達も共に落ちてきて……。気づいたら追っかけられてたんだっ」
気持ちが高ぶってきたのか、胸の辺りを掴みながら甲高い声で叫ぶ。少女は不快そうに耳を塞ぎ自身より遥かに身長の高い少年の足を無造作に蹴った。恐らく、歳も五歳ほど離れているだろう。少年は蹴られた足を抱えてその場に蹲った。
そして、少女は堂々と鼻を鳴らして腕組をし少年に負けず劣らずの大きな声を出した。
「違いますわね。あたくしの写真が野蛮な建物に貼られていましたわ。……あたくしは賞金なのでしょう」
少年は驚いたように目を見開く。一言も言わない彼に、少女は酷く落胆した。そして、「貴女もそうなのですね」とその場で泣き崩れる。少年は行き成りの彼女の態度に酷く困惑した。このとき、如何すればいいのかとあたふたするばかりであった。
彼は少女と同じような深い溜め息をして、本当のことを話し出した。勿論、幼い彼女にも分かるように、だ。
「君はこの国で言ったら確かに賞金だ。空から降ってきたものは賞金に課せられる。この住民、皆伝説だと思ってたさ……」
小さい声で呟きながら話を続ける。その真剣な瞳に少女は不思議と釘付けになっていった。
「君が行き成り現れたんだ。空から。すっと。俺は金が欲しかった。だから……」
続けようとする少年の唇にすっと白く細い人差し指を当てる。そして、首を横に振る。彼は吸いかけた息を一気に吐き出し、一点の雲を見つめる。流れ行く雲はいつもとかわりがない。けれど、一人の少女によって彼の人生は大幅に変わろうとしているのである。
少女は一気に立ち上がり、分厚いドレスを脱いだ。少年は一体何が起こっているのかが分からなく瞬きをする外なかった。腕が露出される。少年はぎゅっと瞳を瞑ろうとした瞬間、彼女は下に質素なワンピースを着用していた。
「貴女のお名前は?」
少女が手を差し伸べながら尋ねる。
「小竹拓海……」
「タクミ……。あたくしはユズですわ。姓は御座いません。それでは、参りましょう。タクミ」
拓海はユズに気に入られた。その事を拓海は全く分からなかった。
しかし、走ることしか彼には残されていない。
今度は手を繋ぎ、彼等は其処を後にした。
(Thank! 時梅様)
一般人とお姫様のお話。
けど、貧乏な。
いつか機械があったら中篇くらいにしたいなー。
もっと細かい設定加えて。
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