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哀傷
妹子の嗚咽が聞こえる。どうしたんだろう。けど、聞くことが出来ない。もどかしさが握られた拳の中で動き出す。一歩踏み出したら拒絶されるだろうか。恐ろしさが込み上げてくる。右往左往していたら、がちゃりと扉が開いた。真っ赤な瞳にぐちゃぐちゃな顔。だけど、可愛らしいその表情は妹子そのものだった。
「……夜遅くどうしたんですか」
不機嫌な声。やはり、来てはいけなかったんだろうか。しどろもどろに口を動かしていると妹子は徐に不機嫌な顔になっていく。妹子は溜め息をつき奥を指差してより一層不機嫌そうに呟いた。
「中、入ってください。セーターも着ないで寒いでしょう?」
不機嫌なのにこうして気遣ってくれる。恐らく、私のことはただの優しくてうざったい先輩だとしか思っていないだろう。現に妹子は、私の知らない男に先程告白して振られたのだ。握り締められている携帯で判る。
私は変な胸騒ぎがしたので此処に来た。今日決着つけますという頼りない笑顔が胸の中から離れなかったのだ。男の勘というのも当たるらしく、来てみたらやはり彼女は泣き喚いていたのだ。
上がると甘い妹子の匂いが漂ってくる。自分の頬が紅潮していくのが判る。だから、ふわふわな絨毯に座るや否や手で頬を叩く。両親はいないらしく、一人暮らし。以前「一緒に住もうか」と本気で聞いたら、平手で叩かれたあと、「ふざけないでください」と一蹴された。本気なのにと涙を浮かべたらツンとそっぽを向かれたことが或る。あれもこれもいい思い出だなと出されたお茶を啜りながらふと思う。
彼女もお茶を私に出したあと、隣にそっと座ってくる。先程、シャワーを浴びたのだろうか、シャンプーのいい香りが漂ってくる。その香りに浸っていると、彼女の軽蔑的な視線が浴びせられるのに気づき、私は咳払いをしてまたお茶を啜った。
「やましいこと考えてるんじゃないんですか?」
含んだものを外に吐き出す。「うわ……」という呟きが虚しく耳に響き渡る。けれど、彼女は今日、始めて笑った。少し安堵したが私は「酷いなあ」と少し怒った。すると、また俯き顔になる。
「どうしたの、妹子」
分かってるくせに表面上の私は優しくない。本当は、優しく抱き締めて慰める冪なのに。だが、妹子は真実を話し始めた。時折、鼻を啜る仕草や声が震えるのが分かる。
紳士的な男性だったら、妬くなんてことしないと思う。けれど、私と言う穢れた生き物は出会ったことの無い男に今、妬いてしまっている。
「振られて……しまったんです。大好きな人に」
私は何も言わず頷く。けれど、どきまぎした気持ちが胸の中に生じているのは確かだ。
「なんで……こんなに苦しいんでしょうか?」
上目遣いに私を見上げる。潤んだ瞳で見られたら、どんな男でも抱き締めてしまう。真っ白になった私も思わず抱き締めてしまっていた。しかし、彼女は抵抗しなかった。寧ろ受け止めてくれた。酷く癇癪を起こしているが背中を摩る。耳元で「大丈夫だよ」「泣かないで」と囁いた。すると、段々と彼女の雨は止んでいく。なんで、こんな可愛らしい子を振るのだろうか。可哀想過ぎる、なんでだろう。私なら受け止めて上げれるのに。
「本当にその人のこと大好きだったんだね」
「はい……」
「……私じゃ駄目かな?」
何を口走っているのだろうか。妹子の心を救えるのは、私じゃないかもしれないのに。しかし、妹子は拒絶しなかった。けれど、頷く事も無かった。ただ一言微笑を浮かべて「有難う御座います」それだけだ。
もうすぐで十時を告げるので、私は帰る事にした。朝までいるよ、と言うと大丈夫です、と即答された。硝子のような私の心は粉々に砕かれたがやはり帰る事にした。
「じゃあ、また明日」
「はい。また明日」
私は一歩踏み出す。彼女は振り返り家に入ろうとする。それで、よかった。それがよかった。しかし、私は何を思ったか妹子を抱き締めていたのだ。
「やっぱり……駄目なの?」
「……ヘンタイ」
「それだけじゃ、判らない」
「莫迦じゃないですか?」
「愛してるよ」
「莫迦ですね。やっぱり」
いい、それでも、いい。
私が大莫迦ものだということも、わからずやだと言う事も十も承知だ。けれど、今夜は妹子を慰めてやりたいのだ。やましい気持ちなんて今は少しもない。ただ、先輩として連れ添っていたいのだ。
.
「太子」
「なあに?」
「好きな人、いますか」
嗚呼、そんなこと言わないでくれ。嘘を吐かなくてはならないじゃないか。
私は引き攣り笑いをして「いないよ」と答えた。そうですか、と答えた彼女は次の瞬間、眠りについてしまった。今すぐにでも口付けをしたい。やはり、私は人間と言う皮を着た狼なのではないかと思う。
「愛してるよ、妹子」
けれど、今日は約束した。ただ、慰めて頭を撫でるだけ。
新しい恋に出逢えるといいね。私は微笑を浮かべ、数秒後眠りについた。いい夢見れるかな。明日、また笑いあえるかな。ずっと一緒だよ、ずっとずっと……。
fin
※会話文のみ
「たーいしっ」
「何だ、妹子」
「いや、本当に太子って好きな人いないのかなーって」
「イナイイナイ」
「なんでそんなに目をそらすんですか……」
「……ホラ、妹子、手止まってるぞ」
「ま、別にいいです。どーせ、僕以外でしょうから」
「何? 私が妹子を愛せばいいの? そして、お前は満足するの?」
「……顔近いです」
「……」
「だから、顔近いって言ってんだろうが! このヘンタイ芋虫ぃっ!」
私が彼女に勝てる日と彼女が私に振り向く日は、遠いようです。
(本当に)おわり
アトガキ
羞恥心の泣かないでをイメージしてみました。
嘘です。
太→妹を書きたかっただけです。
モチ、妹子は女体化です。
BLは手を出せません……。
にょたも腐ってますけどねハハハ。
太子はイケメン。
妹子は美少女。
ってことでどうでしょうk(黙れ
「……夜遅くどうしたんですか」
不機嫌な声。やはり、来てはいけなかったんだろうか。しどろもどろに口を動かしていると妹子は徐に不機嫌な顔になっていく。妹子は溜め息をつき奥を指差してより一層不機嫌そうに呟いた。
「中、入ってください。セーターも着ないで寒いでしょう?」
不機嫌なのにこうして気遣ってくれる。恐らく、私のことはただの優しくてうざったい先輩だとしか思っていないだろう。現に妹子は、私の知らない男に先程告白して振られたのだ。握り締められている携帯で判る。
私は変な胸騒ぎがしたので此処に来た。今日決着つけますという頼りない笑顔が胸の中から離れなかったのだ。男の勘というのも当たるらしく、来てみたらやはり彼女は泣き喚いていたのだ。
上がると甘い妹子の匂いが漂ってくる。自分の頬が紅潮していくのが判る。だから、ふわふわな絨毯に座るや否や手で頬を叩く。両親はいないらしく、一人暮らし。以前「一緒に住もうか」と本気で聞いたら、平手で叩かれたあと、「ふざけないでください」と一蹴された。本気なのにと涙を浮かべたらツンとそっぽを向かれたことが或る。あれもこれもいい思い出だなと出されたお茶を啜りながらふと思う。
彼女もお茶を私に出したあと、隣にそっと座ってくる。先程、シャワーを浴びたのだろうか、シャンプーのいい香りが漂ってくる。その香りに浸っていると、彼女の軽蔑的な視線が浴びせられるのに気づき、私は咳払いをしてまたお茶を啜った。
「やましいこと考えてるんじゃないんですか?」
含んだものを外に吐き出す。「うわ……」という呟きが虚しく耳に響き渡る。けれど、彼女は今日、始めて笑った。少し安堵したが私は「酷いなあ」と少し怒った。すると、また俯き顔になる。
「どうしたの、妹子」
分かってるくせに表面上の私は優しくない。本当は、優しく抱き締めて慰める冪なのに。だが、妹子は真実を話し始めた。時折、鼻を啜る仕草や声が震えるのが分かる。
紳士的な男性だったら、妬くなんてことしないと思う。けれど、私と言う穢れた生き物は出会ったことの無い男に今、妬いてしまっている。
「振られて……しまったんです。大好きな人に」
私は何も言わず頷く。けれど、どきまぎした気持ちが胸の中に生じているのは確かだ。
「なんで……こんなに苦しいんでしょうか?」
上目遣いに私を見上げる。潤んだ瞳で見られたら、どんな男でも抱き締めてしまう。真っ白になった私も思わず抱き締めてしまっていた。しかし、彼女は抵抗しなかった。寧ろ受け止めてくれた。酷く癇癪を起こしているが背中を摩る。耳元で「大丈夫だよ」「泣かないで」と囁いた。すると、段々と彼女の雨は止んでいく。なんで、こんな可愛らしい子を振るのだろうか。可哀想過ぎる、なんでだろう。私なら受け止めて上げれるのに。
「本当にその人のこと大好きだったんだね」
「はい……」
「……私じゃ駄目かな?」
何を口走っているのだろうか。妹子の心を救えるのは、私じゃないかもしれないのに。しかし、妹子は拒絶しなかった。けれど、頷く事も無かった。ただ一言微笑を浮かべて「有難う御座います」それだけだ。
もうすぐで十時を告げるので、私は帰る事にした。朝までいるよ、と言うと大丈夫です、と即答された。硝子のような私の心は粉々に砕かれたがやはり帰る事にした。
「じゃあ、また明日」
「はい。また明日」
私は一歩踏み出す。彼女は振り返り家に入ろうとする。それで、よかった。それがよかった。しかし、私は何を思ったか妹子を抱き締めていたのだ。
「やっぱり……駄目なの?」
「……ヘンタイ」
「それだけじゃ、判らない」
「莫迦じゃないですか?」
「愛してるよ」
「莫迦ですね。やっぱり」
いい、それでも、いい。
私が大莫迦ものだということも、わからずやだと言う事も十も承知だ。けれど、今夜は妹子を慰めてやりたいのだ。やましい気持ちなんて今は少しもない。ただ、先輩として連れ添っていたいのだ。
.
「太子」
「なあに?」
「好きな人、いますか」
嗚呼、そんなこと言わないでくれ。嘘を吐かなくてはならないじゃないか。
私は引き攣り笑いをして「いないよ」と答えた。そうですか、と答えた彼女は次の瞬間、眠りについてしまった。今すぐにでも口付けをしたい。やはり、私は人間と言う皮を着た狼なのではないかと思う。
「愛してるよ、妹子」
けれど、今日は約束した。ただ、慰めて頭を撫でるだけ。
新しい恋に出逢えるといいね。私は微笑を浮かべ、数秒後眠りについた。いい夢見れるかな。明日、また笑いあえるかな。ずっと一緒だよ、ずっとずっと……。
fin
※会話文のみ
「たーいしっ」
「何だ、妹子」
「いや、本当に太子って好きな人いないのかなーって」
「イナイイナイ」
「なんでそんなに目をそらすんですか……」
「……ホラ、妹子、手止まってるぞ」
「ま、別にいいです。どーせ、僕以外でしょうから」
「何? 私が妹子を愛せばいいの? そして、お前は満足するの?」
「……顔近いです」
「……」
「だから、顔近いって言ってんだろうが! このヘンタイ芋虫ぃっ!」
私が彼女に勝てる日と彼女が私に振り向く日は、遠いようです。
(本当に)おわり
アトガキ
羞恥心の泣かないでをイメージしてみました。
嘘です。
太→妹を書きたかっただけです。
モチ、妹子は女体化です。
BLは手を出せません……。
にょたも腐ってますけどねハハハ。
太子はイケメン。
妹子は美少女。
ってことでどうでしょうk(黙れ
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