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雲行き怪しい午後の日に

二次創作main…日和、VOCALOID率高め   稀に掌アリ
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  • 03/16/08:56

叫んでも流れる雲は掴めなくて

「こんなよわっちいモンスターなんてあたし一人でも倒せるよ」
「ちょ、馬鹿しいなっ。突っ込むんじゃねえよ」

 符術士の藤林しいなは隣で背中合わせで戦闘をしていたゼロス・ワイルダーの声が届かなかった。普段通りの彼女なら容易く倒せただろうが、今のしいなは足首を先程の戦闘で少しいためてしまったのだ。リフィル・セイジの回復術で治してもらったが、彼女の細い足首はやはりまだ負荷がかかっている。だが、しいなは皆を心配させたくないのか笑って痛みを堪えている。
 敵に向かっていくしいなだが、其の足は縺れてしまい其の儘転げてしまった。敵は闘争心を剥き出しにして衝突してこようとしている。逃げようと立ち上がったがもう時は既に遅し。モンスターは彼女の目の前まで差し掛かってきてしまった。唇を噛み締めて瞳を閉じる。だが、痛みは何処にも生じていない。
 不思議に思い目蓋を開けると其処には頭から少量だが血を流しているゼロスの姿があった。彼は「ててて」と無傷な尻を摩りながら起きだす。彼が眺めている先では小柄な少女、プレセアと十七歳の少年ロイド・アーヴィングが戦っていた。彼等はこの状況には気づいていないらしく、先程衝突してきた敵を倒している最中だった。
 しいなは自分が恥ずかしくて堪らなくなった。耳まで顔を真っ赤に染めて小さく「御免なさい」と呟いた。ゼロスは聞こえていないようで未だ戦っている二人を見つめている。やがて、刃が敵を切り裂く音は消えいつものような能天気なロイドの声が聞こえてきた。ゼロスは其の姿を見届け、地面に座っているしいなと目線を同じくするようにしゃがみ込んだ。そして、優しく彼女を包み込んだ。

「ばーか。謝るのは俺じゃないだろ。あいつらだ。其れにお前のお茶目っぷりは小さい頃からカヴァーしてやったしな。ま、痛かったらまずおれに言え、な」

 と抱きついていた腕を緩めて体を優しく離し、胸の辺りを親指で指す。しいなは瞳に涙をためながらかすれた声で「うん」と頷いた。仲間が此方の方へ向かってくる。コレットやジーニアスの心配そうな顔。ロイドの満足げな顔。リフィルは少し怒っているかのようにも伺える。
 ゼロスはしいなの手を引いて体を起こし、小さな背中をぽんっと優しく押し出した。しいなはいつの間にか自分より背が高くなったゼロスに見惚れたが直ぐに仲間の方へ歩みだした。しいなはこっ酷くリフィルに怒られたり、ジーニアスに「ばっかじゃないのー」と罵られたりした。
 微風が吹く。ゼロスは瞳を細めて彼等のじゃれあいを眺めていた。其の瞳に映ったのは顔を赤らめて楽しそうにロイドと話しているしいなの姿だった。

「泣きたいのは俺様なのになー」

 彼の呟きはどこかにかき消されて其の儘流されていった。



TOSのSS。
ゼロス→しいな→ロイド×コレットだったり。
どーしよーもない(笑)
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