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運命(仮)第二章
僕は台所へと向かう。最悪な思い出を思い出していると、心もブルーになっていく。だけど、あの人の笑顔を見れるならそれだけでもいい気がする。いつの間にか嵌っているのだ。僕は彼女に、そして、彼女は僕に……。
やはり太子と言ったところでカレーの具材が全て揃っている。少しだけ感動した僕は、包丁を手にする。木の板を下敷きにし、色々と切っていく。先ずは野菜を煮込み、肉に火を通す。そして、スパイスを色々と組み合わせて、凡そ一時間程度で完成した。僕の額には汗が滲み出ている。
ふうっと一息つき、庭でぐーたら四葉のクローバーを眺め座っている太子の元へと向かう。
「太子、カレー出来ましたよ」
やはり縁側には太子の姿があった。其の丸まった背中は一時間前とは全く変わっていない。彼女は一気に後ろを振り返り、満面の笑みを浮かべた。一応、一人前にしておいた。太子には悪いがカレーはあまり好きではない。少しだけ臭いし辛いし何だか口にあわない。
「いただきまーすっ」
手を合わせたと思ったら直ぐに口にいれている。其れは飲み込んでいるに等しく、水を用意するのを忘れた僕は台所へと向かった。喉にご飯を詰まらせたら非常に面倒だからだ。それに朝廷の役人がみんな、僕のせいだと咎めるに違いない。それだけだったらいいのだが、太子をよく思っていない人々の歓声を聞くと、自分の身が持たないと思う。彼女自身のため、僕自身のために、太子を守らなくてはならない。
僕は大急ぎで水を持っていく。鱈腹食べた彼女はお腹を膨らませ、パンパンになったお腹を撫でている。全く太子らしい。
「水です」
「遅いぞ、妹子っ! ま、有難うな」
と、また笑みを浮かべてコップを取る。すると、手が重なり合わさる。太子は何も感じない様子で其の儘さっと僕の手から奪う。僕はなんて乙女なんだろう。顔が赤く染まっていく。太子に気づかれないようにそっぽを向くことにした。すると、黒い影が草葉から草葉へ移り変わったのが見える。嫌な事態が発生したのかもしれない。
「どーしたの、妹子。眉間に皺寄せて」
余程、怖い顔をしているのだろう。彼女は心配そうに上目遣いで僕を見てくる。少しだけ胸が高鳴ったが、そんなこと気にしている暇は無い。「何でもないです」と微笑む。すると、また彼女の悪い癖。というか、僕が嫌いな言葉を浴びせてきた。
「かんわいーっ」
男に可愛いと言うのは失礼なこと、と教えているのに全く彼女は分かってくれない。けれども、突っ込む猶予はなさそうだった。草葉に隠れていた黒い影が、密かに太子に近づいていっている。姿は見えないが、耳を澄ましたら足音が微かだが聞こえる。剣もない状態で如何やって守るというのだろう。しかし、僕は太子を守らなければならない。なので、太子に背中を向け、黒い影に腹を見せた。例え、剣でどこかを刺されたって死ぬもんか。けれど、怖くて足が竦む。黒い影らしきものは動きを止めた。すると、姿が見える。とても小柄だが、顔は覆面で覆い隠されて見えないし、服装も真っ黒で忍者のようだ。僕は怖気ずに精一杯睨みつける。
「何奴っ!」
「……」
構えもせずそこに突っ立っているだけ。まるで壊れた人形のようで、心が無いようだ。恐らく覆面の下には無表情が潜んでいるだろう。人間の姿をしている化け物に違いない。と考えると、やはり足が竦む。毎日鍛えているからって凶器を持ち合わしているかもしれない不審な人物と争えるわけない。出来るとしたら、命を捨てても太子を守ることだけ。今、太子がどんな表情をしているのか分からない。卒倒しているかもしれないし、呆然としているかもしれない。でも、命だけは僕の力でお守りしなくては。
「去れ、此処はお主が来る所ではない」
「……」
「早くしろ! さもなくば、お主の首を取って……」
「いし……殺……」
男らしき低い声が微かだが聞こえてくる。しかも、剣まできっちりと構え始めた。これは本当に大変なことになるかもしれない。
「太子暗殺」
はっきりとそう聞こえた。すると、僕は肩に刀を刺されていた。忍者らしき者の顔が微かだが見えたような気がする。しかし、もうこの世にいない僕には如何でもいいことだ。そうだ、最後に聞こえたのは太子の声だった。
「妹子おおおおおおおおおおっ」
.
何故か、体は軽かった。赤黒いその世界はとても恐ろしいものでまるで地獄を連想させた。音が響いていないし、人の気配もない。漠然とした記憶が無く、僕が「小野妹子」ということしか思い出せない。だけど、真っ直ぐに進むしかない。怖かったし今すぐにでも夢だと思いたかったがそうにもいかない。何かを思い出して、其れで元の世界に戻らなくては。ただ、そう思った。
僕が近づくと閉じられていた扉は開かれた。今まで光のような明るいものは無かった。確かに、暗くも無かったけれどこう視界が広がるような光は存在しなかった。なれない光に目がやられたが、直ぐに視力は元に戻る。すると、奥に人の姿が合った。黒い服を着て、足組をして頬杖をついている男と、頭に二本の角を生やしてすまし顔をしている男。見詰め合う時間が続く。如何やって言葉にしていいか分からない、其のとき、堂々と座っている男が高らかに声を上げた。
「お前は天国だ!」
「……え?」
若しかして、これが地獄の番人、「閻魔大王」なのか。嘘を吐くものの舌を切り、恐ろしい形相をしている閻魔大王がこんなにほそっこくて人間に近くて優しいまなざしをしているのか。疑問が次々と頭を掠める。すると、隣にいる男はふうっと深いため息をつき、爪を閻魔大王らしき者に刺した。
「大王。今度は殺りますよ」
「す、すみません……ちょっとふざけすぎました」
確かこの遣り取りは何処かで見たような気がする。懐かしい記憶か、其れともただの気まぐれか。なんにしても良かった。僕は此処から抜け出したい、元に戻りたいのだ。
「あの、此処は何処ですか?」
大王に質問したつもりだが、横に立っている……秘書であろう者が、僕の質問に無表情で答える。
「此処は冥界です。貴方は死にました」
「お、鬼男くん……なんで私の台詞をそう易々と奪うかなあ?」
「貴方が説明することはもっと他にあるので」
「あ、あのぉ」
「すまんすまん」と困ったように微笑む大王。隣にいる、おにおくんはツンと澄ましている。何だか、台詞とか色々決められているようだ。でも、一番突っかかっているのは、此処が冥界で僕がもう亡くなっているってこと。だから、先程、大王は胸を張って堂々と「天国」と判定したのだろうか。
「色々と疑問は持ち合わせているようだけど、時間が無い。簡単に説明しよう。君は死んだ。でも、生き返ることは出来る」
「何でっていう顔……してるな。其れは私が閻魔大王で、君の元に戻りたいっていう気持ちが強いからだよ」
その優しい言葉を聞くと、何故か涙がこみ上げてきた。拭いてると、結界のような物が張られる。痛みが生じたが、徐々に心地よくなってきた。次第に記憶が鮮明に思い出される。そして、僕の存在が此処にはなくなる。つまり、元の世界に戻れる……というよりも生き返れる。
「それじゃあ、厩戸皇子の命を救ってまた此処に来てくれ。助っ人は数々用意してる。朝廷は直に焼かれる……が、生き延びられるだろう」
大王が言ってることが聞こえなくなってきた。
「大丈夫。厩戸とお前は死なない。このままのストーリーで行くとな。じゃあ」
すっと、僕は消えた。
.
「大王……。嘘吐いていいんですか」
「嘘は吐いていいときと吐いちゃいけないときがあるんだ。今は吐いていいときだよ」
「……」
「そんな悲しい顔、しないでよ。俺はもう、過ちは繰り返さないよ。だから、彼を此処に呼び寄せたんだ」
「……」
「俺のシナリオでいくと、彼はもう一度、死ぬけどね」
next
色々と申し訳ない。
なんかやり切れてない感でいっぱいどす。
大王は鬼男君以外と話すときは「私」で、鬼男君と話すときとか一人とかの時は「俺」がいい。
うーん、本当に設定が曖昧だな。
別にいいです。もう、どうでも←
次の更新はまだ未定
やはり太子と言ったところでカレーの具材が全て揃っている。少しだけ感動した僕は、包丁を手にする。木の板を下敷きにし、色々と切っていく。先ずは野菜を煮込み、肉に火を通す。そして、スパイスを色々と組み合わせて、凡そ一時間程度で完成した。僕の額には汗が滲み出ている。
ふうっと一息つき、庭でぐーたら四葉のクローバーを眺め座っている太子の元へと向かう。
「太子、カレー出来ましたよ」
やはり縁側には太子の姿があった。其の丸まった背中は一時間前とは全く変わっていない。彼女は一気に後ろを振り返り、満面の笑みを浮かべた。一応、一人前にしておいた。太子には悪いがカレーはあまり好きではない。少しだけ臭いし辛いし何だか口にあわない。
「いただきまーすっ」
手を合わせたと思ったら直ぐに口にいれている。其れは飲み込んでいるに等しく、水を用意するのを忘れた僕は台所へと向かった。喉にご飯を詰まらせたら非常に面倒だからだ。それに朝廷の役人がみんな、僕のせいだと咎めるに違いない。それだけだったらいいのだが、太子をよく思っていない人々の歓声を聞くと、自分の身が持たないと思う。彼女自身のため、僕自身のために、太子を守らなくてはならない。
僕は大急ぎで水を持っていく。鱈腹食べた彼女はお腹を膨らませ、パンパンになったお腹を撫でている。全く太子らしい。
「水です」
「遅いぞ、妹子っ! ま、有難うな」
と、また笑みを浮かべてコップを取る。すると、手が重なり合わさる。太子は何も感じない様子で其の儘さっと僕の手から奪う。僕はなんて乙女なんだろう。顔が赤く染まっていく。太子に気づかれないようにそっぽを向くことにした。すると、黒い影が草葉から草葉へ移り変わったのが見える。嫌な事態が発生したのかもしれない。
「どーしたの、妹子。眉間に皺寄せて」
余程、怖い顔をしているのだろう。彼女は心配そうに上目遣いで僕を見てくる。少しだけ胸が高鳴ったが、そんなこと気にしている暇は無い。「何でもないです」と微笑む。すると、また彼女の悪い癖。というか、僕が嫌いな言葉を浴びせてきた。
「かんわいーっ」
男に可愛いと言うのは失礼なこと、と教えているのに全く彼女は分かってくれない。けれども、突っ込む猶予はなさそうだった。草葉に隠れていた黒い影が、密かに太子に近づいていっている。姿は見えないが、耳を澄ましたら足音が微かだが聞こえる。剣もない状態で如何やって守るというのだろう。しかし、僕は太子を守らなければならない。なので、太子に背中を向け、黒い影に腹を見せた。例え、剣でどこかを刺されたって死ぬもんか。けれど、怖くて足が竦む。黒い影らしきものは動きを止めた。すると、姿が見える。とても小柄だが、顔は覆面で覆い隠されて見えないし、服装も真っ黒で忍者のようだ。僕は怖気ずに精一杯睨みつける。
「何奴っ!」
「……」
構えもせずそこに突っ立っているだけ。まるで壊れた人形のようで、心が無いようだ。恐らく覆面の下には無表情が潜んでいるだろう。人間の姿をしている化け物に違いない。と考えると、やはり足が竦む。毎日鍛えているからって凶器を持ち合わしているかもしれない不審な人物と争えるわけない。出来るとしたら、命を捨てても太子を守ることだけ。今、太子がどんな表情をしているのか分からない。卒倒しているかもしれないし、呆然としているかもしれない。でも、命だけは僕の力でお守りしなくては。
「去れ、此処はお主が来る所ではない」
「……」
「早くしろ! さもなくば、お主の首を取って……」
「いし……殺……」
男らしき低い声が微かだが聞こえてくる。しかも、剣まできっちりと構え始めた。これは本当に大変なことになるかもしれない。
「太子暗殺」
はっきりとそう聞こえた。すると、僕は肩に刀を刺されていた。忍者らしき者の顔が微かだが見えたような気がする。しかし、もうこの世にいない僕には如何でもいいことだ。そうだ、最後に聞こえたのは太子の声だった。
「妹子おおおおおおおおおおっ」
.
何故か、体は軽かった。赤黒いその世界はとても恐ろしいものでまるで地獄を連想させた。音が響いていないし、人の気配もない。漠然とした記憶が無く、僕が「小野妹子」ということしか思い出せない。だけど、真っ直ぐに進むしかない。怖かったし今すぐにでも夢だと思いたかったがそうにもいかない。何かを思い出して、其れで元の世界に戻らなくては。ただ、そう思った。
僕が近づくと閉じられていた扉は開かれた。今まで光のような明るいものは無かった。確かに、暗くも無かったけれどこう視界が広がるような光は存在しなかった。なれない光に目がやられたが、直ぐに視力は元に戻る。すると、奥に人の姿が合った。黒い服を着て、足組をして頬杖をついている男と、頭に二本の角を生やしてすまし顔をしている男。見詰め合う時間が続く。如何やって言葉にしていいか分からない、其のとき、堂々と座っている男が高らかに声を上げた。
「お前は天国だ!」
「……え?」
若しかして、これが地獄の番人、「閻魔大王」なのか。嘘を吐くものの舌を切り、恐ろしい形相をしている閻魔大王がこんなにほそっこくて人間に近くて優しいまなざしをしているのか。疑問が次々と頭を掠める。すると、隣にいる男はふうっと深いため息をつき、爪を閻魔大王らしき者に刺した。
「大王。今度は殺りますよ」
「す、すみません……ちょっとふざけすぎました」
確かこの遣り取りは何処かで見たような気がする。懐かしい記憶か、其れともただの気まぐれか。なんにしても良かった。僕は此処から抜け出したい、元に戻りたいのだ。
「あの、此処は何処ですか?」
大王に質問したつもりだが、横に立っている……秘書であろう者が、僕の質問に無表情で答える。
「此処は冥界です。貴方は死にました」
「お、鬼男くん……なんで私の台詞をそう易々と奪うかなあ?」
「貴方が説明することはもっと他にあるので」
「あ、あのぉ」
「すまんすまん」と困ったように微笑む大王。隣にいる、おにおくんはツンと澄ましている。何だか、台詞とか色々決められているようだ。でも、一番突っかかっているのは、此処が冥界で僕がもう亡くなっているってこと。だから、先程、大王は胸を張って堂々と「天国」と判定したのだろうか。
「色々と疑問は持ち合わせているようだけど、時間が無い。簡単に説明しよう。君は死んだ。でも、生き返ることは出来る」
「何でっていう顔……してるな。其れは私が閻魔大王で、君の元に戻りたいっていう気持ちが強いからだよ」
その優しい言葉を聞くと、何故か涙がこみ上げてきた。拭いてると、結界のような物が張られる。痛みが生じたが、徐々に心地よくなってきた。次第に記憶が鮮明に思い出される。そして、僕の存在が此処にはなくなる。つまり、元の世界に戻れる……というよりも生き返れる。
「それじゃあ、厩戸皇子の命を救ってまた此処に来てくれ。助っ人は数々用意してる。朝廷は直に焼かれる……が、生き延びられるだろう」
大王が言ってることが聞こえなくなってきた。
「大丈夫。厩戸とお前は死なない。このままのストーリーで行くとな。じゃあ」
すっと、僕は消えた。
.
「大王……。嘘吐いていいんですか」
「嘘は吐いていいときと吐いちゃいけないときがあるんだ。今は吐いていいときだよ」
「……」
「そんな悲しい顔、しないでよ。俺はもう、過ちは繰り返さないよ。だから、彼を此処に呼び寄せたんだ」
「……」
「俺のシナリオでいくと、彼はもう一度、死ぬけどね」
next
色々と申し訳ない。
なんかやり切れてない感でいっぱいどす。
大王は鬼男君以外と話すときは「私」で、鬼男君と話すときとか一人とかの時は「俺」がいい。
うーん、本当に設定が曖昧だな。
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